富士通に連絡したのはいいが、それでデータが救える保証は無かった。
それ以前に、もうこれ以上悠長に結果を待ってる時間の方が無かった。

良心の呵責に苛まれた俺はたまらずメンバー二人に現在置かれている状況を正直に相談する事にした。
最悪データが欠損している曲は演奏しないか、それとも全く別のアレンジで演るか?
準備の時間もあるしそろそろこのあたりで決断しなければならない時が来ていた。

二人に話したらどう思うだろう?何と言ってくるかな?
このあたりを想像するだけで気が滅入った。
俺が持ちかけて始めた20周年企画だというのに、代表的な曲のデータがことごとく無い状態だと知ったらテンションも下がるだろう。
何より今回は自分自身このプロジェクトに関わる全ての関係者、そしてファンの皆さんの気持ちをライブ当日にピークに持っていこうと必死に盛り上げてきていた。それだけにこの状況は受け入れがたいものがあった。

 

救出は間に合うかもしれない。
でもきっと間に合わないだろう。
間に合ったとして、それをライブ当日までにエディットする時間がない。
20年前のデータじゃファイル形式も違うし今のソフトじゃ開けない可能性の方が高い。
そして当時は何十万としたアウトボードがついたPCも今となっては過去の遺物、そんなレトロなシステムを持ってる人、まして今だに仕事で使っている人をこの短期間で見つけるのはまず不可能・・・。

 

これは無理だ。仮に今この瞬間にデータが助かっても間に合わない。

 

『サトシ時間はないぞ!ホントに間に合うのかよ?』
『なんでなんだよ、どうしてないんだよ。。。。』
『無理じゃんもうこれ』
『くそぉおお、せっかく見つかったと言うのに!!』

 

何度この夢を見たかわからない。
夢と現実の違いがわからず無意識のうちに声に出してしまっていた事もあった。
それは一度や二度ではない。

残念だがこれまでの俺の苦労は全部無駄だったのだ。
デビットやピート、犬や雀、床屋や暗記パン(小人ロボットです)などが頭に浮かんでは消え、また浮かんでは消えていった。
悔しい。悔しすぎる。せっかくここまで頑張ってきたのに。
どうする?このプレッシャーに俺はもう耐えられそうもないよ。もういっそのこと全部放り投げて逃げちゃうか。

 

 

どれくらいの時間が過ぎただろう。
気付くと俺は視点も定まらない状態でその場に座り込んでいた。
そんな時だ、視線の先で山積みになっているダンボールの間に見慣れない紙袋が挟まっているのを見つけた。
『ん?何だろこれ?こんな袋、前からあったっけ?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・

『 ああっ!』

『 こ、これは!!!?』

覚えているだろうか。
俺が第4話で『人間、時間の経過と共に記憶も薄れて行くものだ。』と言ったのを。

その紙袋に入っていたものはGITANEのバックアップデータ(DVD)だった。
しかもそれは今回死ぬほどの苦労をしても救出に至らなかったあのハードディスクの中の物だった。
おそらく17年前、所属事務所から資料を引き取った際に虫の知らせか俺はその中にあったハードディスクのデータをDVDにバックアップしたのだと思われる。
何でそんな事をしたのかそれは分からない。
その程度だから当然ながら記憶からも吹っ飛んでしまっていた。
DVDの存在も、そもそもバックアップを取った事すら覚えていなかった。

当時の自分に数十年後HDD本体が動かなくなる事を予知できたとは決して思わないが、
とにかく見事と言うほかない。

 

 

奇跡は起きた。
涙が止まらなかった。
俺は俺自身に救われたのだ。

 

そう、17年前の俺に。

 

 

「みんな、長い間この話に付き合ってくれてありがとう。
おかげで、今度のライブはベストのパフォーマンスを見せる事が出来るよ。」

 

 

俺たち三人がステージに立って、生演奏と共に打ち込み音源が流れたら
どうか思い出してほしい。
一人の男の血と汗と涙の物語を。

 

Saving Myself グッジョブ俺 (笑)

4 のコメント

  1. ほんとに!?(これは嬉しいの本当にあっった)
    ホントに?!(これは記憶なかったそれに対し)
    本当に?(これは会場忘れてLiveなかったりしないのかな不安)

    ま、信じましょう、それが31年愛(^皿^)

    ところでこの小説は、会場のみ販売されるのかな?

    兎屋
  2. 夜中2時半に寝ぼけてコメするものではないですね(^◇^;)
    わけわからんコメですね。ご免なさい(>人<;)
    兎に角、お疲れ様でした。参戦が東京のみになりましたので、
    2会場分暴れさせてもらいます(๑>◡<๑)

    兎屋

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